これまで①問題の認識から②解決策の立案の過程で勉強になる書籍を紹介してきたので、次はいよいよ③解決策の実行だ。
この「解決策を実行する」という3番目の段階は、問題解決のプロセスの中で突破するのに最も難易度の高い局面となる。というのも、多くの場合、自分以外の複数の関係者を巻き込み、説得しなければ、目標に到達しないことが多いからだ。
会社にしろ、友人同士の関係にしろ、身の回りのコミュニティでは利害関係者が多く存在する。例えばある問題が自分にとっての不利という状況は、別の関係者にとってが「問題」ではなく有利な状況ということもありうる。この時、自分が問題を解決しようとすれば、その相手は抵抗勢力となり、時には邪魔をしてくることもある。
このような状況をどのように突破するか、というのが『問題解決の思考を学ぶⅢ』のテーマだ。今回は立案した解決策を適切に実行するために、関係者とのコミュニケーションをスムーズに進めるのに役立つツールを、「文章」と「対話」という2つのパターンに分けて、それぞれの書籍を紹介する。
それでは始めに「文章」というコミュニケーションツールを磨くのに参考になる書籍を紹介しよう。
■日本語の作文技術 新装版 本田勝一著
本書はロングセラーの新装版で、どのように執筆すると文章が読みやすくなるかが書かれている。例えば仕事上で稟議書やプレゼン資料を作成する時、相手にとって伝わりやすい文章を書くことが求められる。この他にもこのようなブログを書く時、クラウドソーシングでライティングの案件を受注して原稿を執筆する時など、本書に書かれている技術は非常に役に立つだろう。
Amazonにも多数レビューが書かれているので大まかな内容はそちらを参考にいただければいいので、自分は特に役に立つと思うポイントを紹介したい。それは次の3つだ。
―直結の原則―長い修飾語は前に、短い修飾語は後に―テン(読点)のうちかた
それでは一つずつ追って行こう。
―直結の原則(本書のP42より)
一番目に取り上げたいのは「直結の原則」である。この「直結」とは、修飾する語と修飾される語の位置関係ことであり、文章の中では遠くにあるよりも近づけて書かれていた方が読み手にとって分かりやすい、ということを筆者は述べている。
「直結の原則」の例を紹介しよう。
A:厳しい上司のノルマ
B:上司の厳しいノルマ
Aは「厳しい」のが上司であり、Bは「厳しい」のがノルマというように理解である。このように、僅かな位置の違いによって修飾する語が変われば文の意味も大きく異なるのであり、特に修飾する文が長ければ長いほど文全体の意味が伝わりにくくなる。
この直結の原則について「知っているし常識だ」と感じる人も多いと思う。だが、意外と文章を実践的に書くことを教えられる機会というのは少ないと思う。小中学校では、どちらかというと文章を書く授業の時間より、教科書に掲載されている文章を読解する授業の時間の方が圧倒的に長いし、高校時は大学入試に論文がある学校が少ないということもあり、そもそも文章を書く授業がほとんどないと思う。
要するに、文章をわかりやすく論理的に書くトレーニングの機会がもったという人は多くない。だからそもそも「言われれば気付く」というような文法のルールも、書いて練習するという機会が少なければ、自在に使いこなせるようにはならないと思う。今までこのような原則を意識しないで文章を書いていたという人は、意識してみるとさらにわかりやすい文章を書けるようになるはずだ。
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