―構造化
2つめのポイントは「構造化」である。
構造化とは、分析する対象を細かい要素に分けていき、要素同士の関係性を理解した上で、同じ性質の要素と違う性質の要素に分類し、整理統合していく作業のことだ。
前回の記事で「分析」の定義を「要素で分ける作業を通じて目的に合致した意味合いを得ること」と紹介したが、この「意味合いを得る」ための助けとなるのが構造化である。
本書では構造化を次のように定義している。
「ある事象の構成要素と、それら構成要素間の位相(繋がり方/関係性)を明らかにすることである」
(P156より)
この作業を行うと要素間のつながり方の特徴が把握できる。ある要素と別の要素に相関関係があったり、因果関係を発見したり、といった具合だ。
例えば、創業以来売上を右肩上がりで伸ばしてきた流通企業は多くある。それらの企業は勢いに乗って新店舗を次々と出店することで成長してきたが、バブル崩壊以降、店舗あたりの売上高が右肩下がりで減少している企業が少なくない。
この場合、売上が上がることで店舗数も増えていったため、売上という要素と店舗の数という要素は生の相関関係があるようにみえるが、実は店舗数の増加は店舗ひとつあたりの売上高と負の相関があったことになる。
少し無理のある事例に聞こえるかもしれないが、実際に上場している流通企業の有価証券報告書に記載されている売上高から店舗数を経年で割ってみると、上記のような現象に直面している企業が多く存在する。気になる人はいくつか試してみたらいいだろう。
今回は有価証券から得られる情報をもとに、売上と店舗の数という組み合わせで意味合いを得る事例を紹介したが、分析する対象を要素を分類して組み合わせたり構造化したりすることで、意味合いを得る関係性に着目しやすくなる。
この「分類」「整理」「統合」といった作業はある程度慣れが必要だ。本を読むだけでは身に付かないので、「価値の高い」意味合いを抽出できるよう実際に多数の分析作業を経験してほしい。
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