問題解決の思考を学ぶⅣ 問題解決の結果と分析 その3

―グラフ化

3つめのポイントは「グラフ化」で、グラフ化とは数値を図で表現することを意味する。収集する情報は主に定性情報と定量情報に分けられるが、グラフ化が活躍するのは主に数値を扱う定量情報だ。

たいていの人にとって文字情報は頭の中で入りにくいと思う。例えば、同一作品の小説版と映画版を比較すればわかりやすい。どちらの内容が面白いかどうかは別として、イメージとして頭に入ってくるのはどちらかといえば、作品を映像化した映画版を選ぶ人の方が多いと思う。

このことは数値に関しても同様で、数値の羅列から「どのような傾向にあるのか?」「何が起こっているのか?」という意味合いを読み取ることはよほど見慣れているひとでないと難しい。
しかし、数値をグラフ化して「画像」で表現すれば頭の中でイメージしやすくなり、意味合いを得ることを劇的に楽にしてくれる。

本書では、グラフ化の効用について次のように述べている。

データのグラフ化は、データの束が何を意味しているかを容易に理解できるようにしてくれるだけでなく、論理展開の端緒となるようなメッセージの鍵をあたえてくれるという大きな効果もあるのである。

(P182より)

ところで、集めた数値に対して、グラフはどのように選んだらよいだろうか。例えば、Microsoft社のExcelにはカテゴリーだけで縦棒、折れ線、円、横棒、面、散布図、株価、等高線、ドーナツ、バブル、レーダーと11種のグラフがある。それぞれのグラフは当然性格が異なっており、収集した数値情報によって使い分けが必要となってくるが、すべてのグラフの特徴を理解して使い分けるにはやはり労力がかかり、悩ましいところだろう。

この疑問に対して、本書が推奨しているのは「平面上に二次元形状で表現される」棒グラフ(縦棒)、線グラフ(折れ線)、点グラフ(散布図)、そして「一変数だけの表現に使われる」円グラフの4つを挙げ、

これら四つのタイプのグラフがあれば、よほど複雑で難易度のたかいものでなければ、データの持つ規則性や注目すべき変化を読み取ることが可能である。データのグラフ化を行う場合には、あまり凝った形状を指向するのではなく、これら四つのグラフパターンに精通していただきたい

(P191より)

としている。
もう一つ、グラフ化するにあたってどのようなことを意識すれば良いか、本書で提示されている点について触れておきたい。

データが持つ意味合いを読み取るためには、グラフにおける「規則性」と「変化」を発見することがカギになるのである。

(P192より)

規則性については、ある数値の羅列を棒グラフや折れ線グラフで表現した時に、右肩上がりか、右肩下がりか、あるいはバラバラで規則性がないと判断するか、ということになる。

例えば内閣府のホームページで公開されている平成24年版 高齢社会白書の(2)将来推計人口でみる50年後の日本によると、1950年から2010年までは右肩上がりで描かれているが、2015年以降は右肩下がりで描かれている(実際、2015年の国勢調査で初めて減少に転じた)。

これはひとつの規則性である。逆に、規則性がない例としては短期で見る株価や為替などがある。尚、本書では規則性には原則的に「傾向」と「相関」の2種類があると述べている。このことについては本書にて詳しい内容を確認してほしい。

次に変化であるが、グラフから読み取る「変化」とは、一定の傾向を示していたグラフの一部に突出値が見られるかどうか、ということである。例えば、2013年の4月に消費税が5%から8%に増税されたが、流通小売市場で直前の3月に多くの品目で駆け込み消費が観測された。

実際、この時の家計消費支出でも多くの品目の消費額が例年の3月に比べて大幅に伸びている。このように、例年の傾向を逸脱するようなデータ数値が「変化」である。

尚、本書では変化は「突出値」と「変曲点」の2種類がある、としている。変曲点については本書で内容を確認してほしい。

以上のように、グラフ化することで規則性や変化の発見が容易になる。このことは分析作業において意味合いを得る大きなポイントとなる。

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それでは最後に、問題を分析した後のActionの考え方について述べてみたい。例えば、日経新聞の『私の履歴書』などのように、多くの経営者がどのように経営(Action)して業績を上げてきたかが書かれている本もあるが、それはあくまでもその時の市場環境や競合環境において一つの企業、経営者が行った成功(あるいは失敗)事例であって、同じ状況が将来の他の人や企業に当てはまるような状況は存在しえないと思う。

言い換えれば、このような事例をいくら読んだり聞いたり、あるいは考えたところで同じような状況が起こるのか、別のような結果が生じるのか、それは「やってみないことにはわからない」のである。

このような乱暴な定義で言えば、PDCAのActionに適切な本というのは存在しない。

それでは、問題解決をどのように進めていくべきか。最後に自分が提示したいのは次の点である。
すなわち、「①から④までの問題解決の流れを踏んでいけば、次にどのような行動を起こせばよいかはおのずと見えてくる」ということだ。

①において本質的な問題を発見し、②で問題の解決策を立案し、③で実行にうつし、最後に④で実行結果の評価を分析する。そうすると新たな問題、あるいは事実がそこで改めて見えてくるだろう。その新たに発見した事実(問題)をまた①に戻って解釈し、そして②~④のプロセスを踏む。

このサイクルが、自分が直面した問題を解決していく流れである。この流れに沿って自分の身の回りの生活環境や携わる業務上の課題を日々解消していく、というのが僕の問題解決の考え方である。

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