問題解決の思考を学ぶⅢ 解決策の実行 その6

―結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ

3つ目のポイントは「結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ」だ。
交渉の最終段階、落としどころ、クロージング…ここで間違いが起こると、途中までスムーズに進んでいた交渉もすべて水泡に帰すという最悪な事態を招いてしまう。

お互いが自分の望むような有利な結果を追求し続ける限り、公平な合意に着地することは難しいだろう。そこで役に立つのが客観的基準だ。例えば「1年は365日」といった自然法則や、「三角形の内角の和は180度である」といった数学的公理、国勢調査といった全数調査の統計的数値であれば、客観的基準としては申し分ない材料になるだろう。

ただし、このような客観的な基準が当てはまる事例は少ない。
その場合は客観的基準を作ってしまうのも一つの手だ。例えば「共働きの夫婦間において、炊事洗濯育児といった家事の分担をどのように公平に案分するか?」などという悩ましい問題を抱えたことがある人は多いと思う。

この場合はまず家事作業の棚卸をして、それぞれの作業が1週間で何度発生するか、その回数と作業的強度(負担度)を一つ一つ積み上げてみる。そして、事実上夫と妻のどちらがその作業を実行しているか、紙に書きながらお互い確認し合う。
仮に、議論するうえでタスクの案分に不確実性が存在した場合は、チェックリスト形式の作業表を作成して、どちらがどの程度作業機会をこなしたかを埋めていく。

このような過程を経れば、嫌でもお互いにとって客観的基準が明らかにされるだろう。そこで改めてこの基準に向き合えば、おのずと公平な交渉結果が実現できると思う(※)。
当事者がお互いに自分勝手な希望を押し付け合うのではなく、どのような客観的基準を落としどころにするかについて議論すれば、お互い公平な解決に向かうことができるはずだ。

以上、交渉時における3つのポイントを挙げたが、これらの方法は数をこなして慣れておく必要がある。というのも、頭でわかっていたとしても感情はいうことを聞いてくれないからだ。言い替えれば、この3つの考え方は自分が感情的にならないよう事前にセルフコントロールする訓練でもある。

(※この段階に達したときは「どちらが給料を稼いでいるか?」などといった論点をずらすような新たな基準を後出しじゃんけんで主張してはならない。行き着くところまで行ってしまう恐れがある。)

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