問題解決の思考を学ぶⅢ 解決策の実行 その5

―立場でなく利害に焦点を合わせよ

2つ目のポイントは「立場でなく利害に焦点を合わせよ」である。
人は、コミュニケーションをしているうちに少しでも相手が自分のとる立場に対して否定的な姿勢を示すと、表明した立場や意見が自分自身の価値観そのものであると錯覚し、自分自身と立場を混同してしまうことがある。

誰しも自己を否定することは苦痛を伴う。自分への客観的な視点を失うと、自分の立場を改めることが困難になり、当初の目的を忘れて最初に表明した立場に固執してしまうことになる。

例えば、多忙により長く会えなかった恋人と久しぶりにデートをする時間がとれたとする。久しぶりに一緒の時間を過ごすのだからお互いに「ゆっくりしたいね」と意見が一致する。自分はどちらかの家でコーヒーを片手に映画でも見ながら過ごしたいという希望を表明し、相手は天気がよさそうなので近くの海辺の公園を散歩しながら過ごしたらどうかと提案する。

このとき、自分は「ゆっくり過ごす」という言葉の意味を「体を休める」ととらえており、相手は「遠出をせずに近場で穏やかな午後を一緒に過ごす」という意味でとらえていたとする。ここで「ゆっくり過ごす」という言葉のニュアンスの認識が若干ズレていたことにより、自分の気持ちが相手に通じないという歯がゆい思いを感じる。「なぜ自分の意見を聞いてくれないのか?」と、相手に理解してもらいたいがために表明した立場を撤回できなくなる。

もともとはお互いデートをして楽しいひと時をすごすという目的が前提にあり、部屋で映画を観ようが、近場を散策しようが、いずれも「ゆっくり過ごす」というデートの方法の一つにすぎないはずなのだが、お互いが意見の押し付け合う状況になると当初の目的は忘却の彼方に消えることになる。

最終的にはどちらかが相手の意見を受け入れることで交渉の幕は閉じるのだが、お互いに意見の押し付け合い、多少なりともストレスを感じつつ当日を迎える。そして、消化不良のまま当日を過ごし、「こんなはずじゃなかった」と感じながらそれぞれ帰途につく。達成すべきお互いの目的から遠く離れた内容で終結を迎えてしまうという事態だ。

このような結果を招かないために事前に意識しておくのがお互いの利害である。今回の事例で言えば、自分の希望(利害)は「体を休めること」と「恋人と会って楽しいひと時を過ごすこと」である。

始めにこの点を自分の中で確認し、次に彼女の気持ち(利害)がどこにあるのかを確認する。すると、彼女の希望は「自分と会って楽しいひと時を過ごすこと」と「広大な自然の景色をみてリフレッシュすること」だった。

この二人の希望(利害)が確認できれば話をまとめる出口までだいぶ前進することができる。あとはお互いの望み(利害)が尊重されるような提案で着地させるようにするだけだ。これが2つ目のポイント「立場でなく利害に焦点を合わせよ」という考え方である。

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